「邦楽普及」の観点から見た文化庁の「邦楽普及推進事業」について
こんにちは。
先日、東京新聞にこのような記事が掲載されました。
「若者の邦楽活動支援 文化庁、東京和楽器廃業危機受け」
(https://www.tokyo-np.co.jp/article/93870))
こちらの内容は文化庁が新年度から邦楽普及拡大推進事業を行うことについて触れたものとなっております。
特徴的な点は「トップレベルを目指す中間層の演奏者拡大に取り組む」というところです。
既存の支援事業は重要無形文化財保持者等が行う伝承者養成や
子供が邦楽を体験できる機会の提供を行っており、中間層を拡大する施策は取り組まれていませんでした。
この「中間層」というのが大学での部活動・サークル活動のことを指します。
内容としては
・指導者を派遣し、月一回程度指導を受ける
・邦楽器の無償貸与
などがあります。
具体的な事業内容に関してはこちらにまとめましたのでご覧いただけたらと思います。
この内容を初めて見たとき
「これは邦楽普及という観点で素晴らしい事業になる」と思いました。
そもそも「邦楽普及」について考えるうえでいくつか考えなければならない点があります。
第一に「邦楽を取り巻く環境」についてです。
現在邦楽に関する市場は年々縮小しています。
しかし、それは必ずしも邦楽に関する興味関心がなくなったからではなく、
直接関わる機会が少ないためではないでしょうか。
現に和楽器の曲は様々なところで流れており、
YouTubeでも有名曲を和楽器カバーして高い再生数を出している動画もいくつか見受けられます。
ゲームなどでもプロの和楽器演奏家の演奏がBGMとして収録されるなどしており、
和風の世界観も一定以上評価を受けているように感じます。
では世間に一定の需要・理解があるとして
「演奏できる人を増やすにはどうすれば良いか」について考えなければならいないのですが、
結論私たちは「学生邦楽に携わる環境を強化するべき」と考えています。
そのように考える一番の根拠は「学生自身が普及活動を行ってくれる」点です。
毎年4月になると新入生が入ってきて学生たちは勧誘活動を行ってくれます。
そして当然のことではありますがこれを毎年4月になるたびに行います。
学生になって始めて和楽器を始める人も多いと思いますが、
学生が勧誘活動を行うことによって、それ自体が邦楽の普及活動になっているのです。
加えて4月以降も上級生が下級生に演奏についてや知識について教えることがあるかと思いますが、
それも普及の一環にあたります。
どんな演奏団体や楽器教室と比べてもここまで最初の門戸が広い活動は
行っていないのではないのでしょうか。
私からすれば学生を利用しない手はないとまで考えています。
ではその普及活動を強化するために大事なことは何かというと
学生が邦楽を行う上でマイナスに思う部分を取り除き、
ぜひ後輩にも「部活・サークルに入ってもらいたい」と思わせることです。
そのマイナス要素が何かというと、例えば楽器購入の際の費用であったり、
師範の有無や月謝、演奏機会だったりします。
以上の点から「邦楽普及」という観点で見たときに今回の支援事業はかなり効果的だと我々は考えております。
「千代之音」としても邦楽普及のために動いている組織として、
こちらの事業を広める一助になるよう広める活動を行っていき、
今後の動きに関しても随時確認して皆様にご報告していきますのでよろしくお願いいたします。